母が最期に言いたかった事

 

ホスピスのベッドにいた母が

他界する1ヶ月位前かな

長男の自分に話しておきたかったのだろう

口を動かしていた

 

何度も聞き返しながら

そこにあった便箋に書いた

 

 わたし ひとりものだったから

いろいろくろうして

はじめのうち

ひとりでくろうして

じんせいも いろいろあった

でも

しごとと いえにはさまれて

ひとりで くろうしたこと

かなし

じぶんでやってきたこと

びょうきしたこと

いろいろ

わたしひとりに わるいこと

それが こういうふうになった

ひとのため わたしのため

わたしのつみに なってしまった

 

 きっと もっと言いたかっただろうな

 

それから後の日々は

「おはよう」位しか言わなかったから

 

これが 母が最期に言いたかった事

 

若い頃に 子供3人残して

父は急逝した

その時2歳だった俺に 父の記憶はない

ただ写真で見るだけ

 

父亡き後 母は

苦労して苦労して

子育てし 家を守った

 

迷惑ばかりかけて

期待を裏切ってばかりで

何もしてやれなかった俺

 

母の人生の終わりの2年間

ホスピスでゆっくり過ごしてくれた事が

せめてもの救い